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武蔵野独り暮らし、日々雑感。
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 前々エントリの続きーー

 そんなわけで沼津港をあとに、いよいよ宿泊地である戸田《へだ》へと向かう。

 先のエントリで触れた少年期の夏休みでは、沼津〜土肥はフェリーにて駿河湾を一気に移動するのがほとんどだったのだが、たぶん一二回ほどはバスを利用した。
 海上ではなく、伊豆半島の海沿いを走る、経巡る旅。

 これがまさにぼくの中でフォークソング『岬めぐり』と直結している印象《イメージ》で、長く西伊豆にご無沙汰している間でも、盛夏を迎え海を想うたび、瞼の裏に空の青、白い雲、海の煌めき、そして豊かな緑がいつでも映っていたものだ。さらに都度、身体を包むように甦る陽射しと潮風の記憶もまた。夏休みに特有の一抹のさびしさも含む、ぼくの原風景のひとつ。

 さて、沼津港を出た車は、ほどなくして街中から海岸線へ。
 長じてから慣れ親しんだ湘南や外房とも異なる、まさに「西伊豆」としかいえない見事な、37年ぶりの風景に感動する。

 ところでご存知のかたも多いと思うが、伊豆半島の西から南端、修禅寺から石廊崎の辺りに至るまでには、鉄道が無い。かつてはあったが廃線となったという地域は日本中に珍しくないだろうが、西伊豆にはもともと無い(と思う)。いってみれば、非常に、不便な地域だ。
 そんなこともあってか西伊豆は昔から文士などの避暑地としても親しまれた地域であるにも関わらず、リゾートっぽい喧騒とは無縁だ。が、だからといっていわゆる過疎地的な寂しさばかりかというとけっしてそんなことはなく、少なくともぼくの中では明るい空と美しい海との記憶もあって、非常にバランスの良い、一種の理想郷として心の奥にある。行ったことはないが、かの『紅の豚』の舞台でもあるアドリア海と、きっと似た感じだろうなと確信している。シチリアとかもまた。


沼津港からほどない、沼津マリーナの近く。ほとんど漁村だが、荒涼とした感じはない

 また西伊豆の海岸の特徴のひとつとして、眼前が最大水深2,500mにも及ぶ雄大な駿河湾だというのに入り組んだ小さな湾が多いため、波が穏やかでかつ海が澄んでいるということもある。とてもとても、海の在りようとして麗しい。今回あらためて訪ってみて、ここを海の原体験にできたぼくは、本当にしあわせだったと思う。


内浦湾に浮かぶ「淡島」。西伊豆の景勝地のひとつ

 またぼくはどこでドライブしても(あるいは「まち歩き」でも)ちょっと面白そうな脇道があるととりあえず入ってみるという悪癖があるのだが(笑)、今回もまたそれにしたがって海岸線から少し山へと入ってみたところ、いかにも素晴しい里山の風景に出会えた。


内浦湾をぐるり巡り、淡島の反対側辺りを少し山へ入った辺り。こうした里山の風景は大好きだ
奥に見える段々畑は静岡名産のみかん畑



「みかんの丘」から望む駿河湾
雲が無ければさらに向こうに霊峰富士を仰ぐことができる


 先を急ごう。

 内浦湾を越えた辺りから、それまで海岸沿いの低地を走っていた道は緩やかな上り坂となり、ついに断崖から海を望む風景と至る。
 そしてこの辺りから数kmごとに「○○の丘」等と称するちょっとした展望所が現れるようになり、各“岬”の眺望を楽しむことができる。ぼくの少年時代はこうしたものは無くもっと野趣豊かな風景が広がっていたと記憶しているが、今はいまで、まあロマンチックでたいへんによろしい(笑)


スキューバダイビングのメッカでもある大瀬崎海水浴場
本州とは思えない美しく澄んだ海だ



思わず息を呑む、雄大で美しい「煌めきの丘」からの景観
雲で隠れていなければここからも向こうに霊峰富士を望める


 ここまで記してあらためて思い起こすと、ぼくが少年期の土肥旅行でフェリーではなくバスで移動したのは、帰路——すなわちさんざん土肥現地で海水浴や虫取りや美味しい魚介類や花火大会や盆踊りや女湯(笑)などのハレ(祭、儀礼)を楽しんだあとの、ケ(日常)に帰るときだったような気がする。そんな折に少年がここまで紹介してきたような風景をバスの車窓から眺め、数年後、思春期を迎える頃に“喪失”を謳う『岬めぐり』を耳にしたならば、そりゃあ激烈な印象がインプリンティング(刷り込み)されて当然だ。ああ、あの頃に戻りたいな(笑)

 ——とまあそんなわけで、おセンチのメートルが上がる中で宿に到着。小一時間ほど部屋で休み、引き続き戸田の海水浴場で少しぱちゃぱちゃして、戻って露天風呂に入り、そうして部屋に戻ったわけだが、ここからの眺望がまた素晴しかったわけですよ!

 西伊豆の楽しみのひとつに本州太平洋側では珍しく海に沈む夕日を観られるというのがあるのだけれども、まあホント、これだけでも西伊豆に宿泊する価値はあると思いますねアタシゃ。


宿の窓からの、刻一刻と変化する海への落陽に息を呑む

 と、ここでお腹が「グー」。部屋の内線も鳴って「お食事です」コール。
 駿河湾の海の幸をこれでもかと喰らったハナシについてはまた次回にて。

 空腹で読むと死ぬこと必至の(笑)、次回エントリをお楽しみにね♪

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